オヤジ: 「いやぁ、今日は参ったよ。台風も過ぎ去って、天気も良かったから、てっきりお客さんが来てくれると思ったんだけど、夕方になってなんかイヤな予感がしたんだよなぁ。」
常連さん: 「え?そんなに静かだったんですか?」
オヤジ: 「ああ、まるで街全体が静まり返ったかのようだったよ。電話も鳴らないし、店の前を行き交う人もほとんど見当たらなかった。『猫一匹も通りゃしねぇ』って感じさ。」
常連さん: 「それはキツいですね…。それで、どうしてたんですか?」
オヤジ: 「最初はね、自分に『そんな不安はブロックじゃ!』って言い聞かせてたんだけどさ、時が経つにつれてその不安が増していってさ。ついには焼酎をがぶ飲みしちまったよ。それで、70年代の歌謡曲が流れてきて、胸に染みてきてさ…『オレ、大丈夫かな?』って。」
常連さん: 「それで、誰かに相談したんですか?」
オヤジ: 「そう、真っ先に思い浮かんだのがN君だったんだ。あいつ、離婚三回もしてるし、借金も俺の三倍抱えてるのに、いつも前向きでさ。あいつに電話したんだよ。」
常連さん: 「N君ですか。あの人、すごいですよね。」
オヤジ: 「ああ、『レジェンドオブレジェンド』って言っても過言じゃないよ。俺が『オレ、大丈夫け?』って聞いたら、あいつ、笑いながら『ハハハハハ、大丈夫ですよ』って言ってくれたんだよ。その笑い声と一緒に、心が軽くなるのを感じたよ。やっぱり、あいつの言う『大丈夫』には、何度も逆境を乗り越えてきた自信があるんだろうな。」
常連さん: 「N君の『大丈夫』って、軽やかだけど信じられるんですよね。」
オヤジ: 「そうそう。それで、もう一人、小料理屋の友人にも電話したんだ。あいつは穏やかで誠実な奴で、彼の『大丈夫』には温かみがあって、また違った安心感があるんだよ。彼の言葉を聞いてると、心が落ち着いてくるんだよな。」
常連さん: 「そんな人たちが周りにいるって、すごく心強いですね。」
オヤジ: 「本当にそう思うよ。『大丈夫』って言葉、誰が言うかでこんなにも重みが変わるんだなって、改めて実感したよ。昨夜、お客さんが一人も来なかったのはショックだったけど、彼らの言葉に救われたんだ。」
常連さん: 「それで、今日はどうですか?」
オヤジ: 「今日も今日とて、焼き鳥焼いてるよ。厳しい日があっても、また次の日には立ち上がって、お客さんを迎える準備をするしかないからな。俺は焼き鳥屋のオヤジだし、煙を絶やさずに火を守り続けるしかないんだよ。」
常連さん: 「オヤジさんのその覚悟、尊敬しますよ。」
オヤジ: 「ありがとな。腕を組んで夜空を見上げて、自分に言い聞かせるんだ。『大丈夫だ』って。この店に込めた想いが、訪れるすべての人に届くようにって。どんな逆風が吹き荒れようとも、どんな荒波が押し寄せようとも、俺は今日も焼き鳥を焼き続けるよ。お前がいてくれるのも、ありがたいよ。」
常連さん: 「いつも、美味しい焼き鳥をありがとうございます。」
オヤジ: 「こちらこそ、いつも来てくれてありがとうな。これからもよろしく頼むよ。」