弟の中学最後の体育祭を応援するため、ひさしぶりに次女が帰ってきました。
新宿歌舞伎町で働く彼女は、普段なかなか戻ってくる機会がないので、このひとときは私にとっても特別なものです。
次女は帰省中の「やりたいことリスト」を作ってて、その中に「麺屋二郎に行く」という項目があるということでしたので、
せっかくの機会だからと、二人でラーメンを食べに行きました。
ラーメンを待っている間、次女が「生ビール飲んでいい?」と聞いてきました。
「せっかく指宿に帰ってきたんだから、たまにはまっ昼間から飲んでもいいんじゃない?」と私は笑いながら答えました。
ジョッキを手に取り、グビグビと豪快に飲み干していきます。
その飲みっぷりを見て、彼女が普段どんなふうに楽しんでいるかが少し垣間見えた気がして、自然と笑みがこぼれました。
ビールを飲みながら、次女は最近よく通っているという「おかまバー」の話を始めました。
「今度一緒に行こうよ!めちゃくちゃ面白いんだから!」と笑う次女を見ていると、ふと昔の記憶が心によみがえってきました。
それは、私が福岡・中洲のバーで働いていた頃のことです。
私と一緒に働いていた「ようちゃん」という同僚の姿が真っ先に浮かびました。
ようちゃんはいつもオールバックで決めていて、物静かで少しナルシストっぽいイケメンでした。
お客さんに 昼ドラにでてきそうな顔をしているということから「昼ドラ」と呼ばれていましたが、、
そんな彼がある日、常連のピン子さんに一目惚れされてしまったのです。
ピン子さんは自衛隊を退役した、筋肉質でゴッツいおじさん。
初めて彼に会ったとき、その印象は衝撃的で、、
がっちりとした体つきに、坊主頭。
そして真っ赤な口紅に、長いつけまつげ、、
「なんだこりゃ」と初めて見る人種に、驚いたのを今でも覚えています。
ピン子さんはだみ声で「おだまり!」と言うのが口癖で、、、
彼の見た目とのギャップがとても面白くて、いつも店内を笑いに包んでいました。
ただ、ようちゃんにとっては笑い事ではありませんでした。
やがて、ピン子さんはようちゃんに向かって
「もっとこっちに来なさいよ」と言いつつ、
ようちゃんは
「えー、ちょっと…」と戸惑っていたんですが、、
「おだまり!」というピン子さんのだみ声とともに、力づくでピン子さんの胸元に引きずりこまれていくようちゃんを見ながら、みんなで大笑いしていました。
閉店時間が近づき、いつものようにチークタイムが始まると、ピン子さんのお相手は、もちろん、ようちゃんです。
ピン子さんの厚い胸板に包まれ、戸惑いながら踊っているようちゃんの姿に店内は大爆笑。
「ねえ、この後どこに行く?」とおねだりするピン子さんに対して、
ようちゃんは「ちょっと用事が…」と必死に逃げようとするものの、
「おだまり! 」と一蹴され、中洲のネオン街に消えていったのです。
翌日、出勤するとようちゃんが掃除をしていたので
「昨日大丈夫だった?」と聞いてみると、意外な一言が返ってきました。
「実は、あれからホテルに行ったんだ」と。
「ウッソ~~、マジで~」と驚いていると、彼はつづけました。
「怖くて部屋の中に電話ボックスがあったから、その中に逃げ込んだんだよね。そしたら、ピン子さんがキレて電話ボックスをユッサユッサと揺らし始めてさ~、最後は流れに身をまかせるしかなかったんだよね、、」と。
そして、まさかの発言を続けました。
「そんじょそこらの女より上手かった」と。
その言葉を聞いた瞬間、私の体に鳥肌が立ちました。
「もしかして、ようちゃん目覚めたのかな…?」と感じて、それ以来、彼と距離をおくようになったんですが、、
その後、ようちゃんはお店もすぐにやめてしまったんですよね。
昼ドラようちゃんのように時々、予期しない出来事や出会いがきっかけとなり、これまでの自分とは違う新しい道が見えることもあるでしょう。
あの時のようちゃんを見て、笑っていたけど、彼にとっては、新しい未来の扉が開いた瞬間だったのかもしれません。
今、私が感じているのは、未来からの力が常に私たちに影響を与えているということです。
過去の出来事に縛られるのではなく、未来が自分に何をもたらすかで、私たちは新しい可能性に気づき、前に進むことができるんだろうなと思います。
そして今日も、焼き鳥屋での一日が始まります。
ただ焼き鳥を焼くだけでなく、 未来からの流れに導かれ、日々少しずつ前に進みつつ、いつか新たな挑戦に備えていく。
時が流れ、私もまた、未来に向かっているのだと感じています。
そして、今日も未来に向かって一歩先へ、焼き鳥を焼いていくとです。
「今日も今日とて、焼き鳥です。」
いつもありがとうございます。