昨夜から大雪注意報がでていた。
鹿児島では何年かぶりの雪なので、少しワクワクする。
しかし、飲食店の経営者としては、それが手放しで喜べるものでもない。
雪が降ると客足が遠のく。
案の定、店は閑散としていた。
「今日は早仕舞いかな」
そんな思いを抱えながら、雪をボンヤリと眺めていた。
ワクワクと寂しさの間で揺れ動くビミョーな感情。
切なさと愛しさと心強さが入り混じり、心が宙ぶらりんになっているようだった。
そんな中、ふと視線の先に雪にまみれた影が見えた。
ひとりの男性客が、雪を払いながら来店。
ドアを閉めると、外の冷気が少し和らぐ。
彼は無言でカウンター席に座り、一発目から焼酎のロックを注文した。
若いのに酒飲みだな、と思った。
雪降る夜に、ひとり焼酎のロックを飲む。
若いのにどこか哀愁が漂っている。
地元客じゃないだろうな、、、
観光客かな、、、
仕事で出張かな、、
そんなことを考えながら、串を焼いていると、彼が笑顔で声をかけてきた。
「正直、こんなに美味しいとは思わなかった。マジで、びっくりです」
思わず僕も笑顔になった。初めて来るお客さんだろう。
「ありがとうございます。どちらからですか?」
「和歌山です」
さらに話を聞くと、彼は一週間後に新しい仕事が始まる前に、まだ行ったことのない九州を旅しようと思い立ったらしい。
その旅の途中で、この「薩摩炭火やきとり 居酒屋つかさ」を選んだという。
「九州はどこを回るんですか?」
「鹿児島から熊本に行って、長崎、佐賀、そして福岡って感じです。」
なぜ、和歌山からの旅人が、このちっぽけなこの焼き鳥屋を選んだのか、
気になって聞いてみた。
「実は、インスタを見てて、パッとココが出てきたんですよ。投稿の内容が変わってるなーと思って見てたら、共感するところがあって、ココに来ようと決めたんです」
驚いた。マジですか!と思った。
SNSで何か役立つことを発信しようと心がけているが、反応が薄く、正直「ヤリ方が間違っているのかも」と思っていたところだった。
だが、見ず知らずのお客さんがそれを見て来店してくれたのだ。
「へぇ、どの投稿が印象に残ったんですか?」
「えーと、細かい内容は忘れましたけど、お店のことだけじゃなくて、焼き鳥への想いや、日々の気づきを書いている気がして。なんか、いいなと思ったんですよね。」
飲食店の投稿といえば、美味しそうな写真を載せて「今日も元気に営業中!」というものが多い。
僕もそういう投稿をしている。
商品案内やイベントの告知もしている。
だけど、それだけでお客さんの心をつかめるのか。
だから、なるべく自分の言葉で、日々の出来事や気づきも綴ってきた。
「なるほどなぁ」
思わず、つぶやいた。
目に見える反応がなくても、こうして誰かに届いているんだな、と思った。
その後、彼は焼き鳥を追加で注文し、じっくりと味わいながら焼酎を飲んでいた。
何年かぶりに雪が降る静かな夜に、彼と出会えたことに、不思議な縁を感じた。
彼が帰った後、もうひとつ、うれしいことがあった。
近所の大先輩がテイクアウトを取りにきた時、こんなことを言ってくれた。
「最近のヒットは、飲み放題のお客さんのことを書いていた投稿だな。アレは、オモしてかった。」
またしても、SNSの話だ。
思った以上に、発信したことは誰かに届いているのかもしれない。
目に見える「いいね」やコメントの数がすべてではない。
実際に足を運んでくれる人、投稿を読んでふと笑ってくれる人、そうした「見えない場所の誰か」に確かに届いているのだ。
この気づきが、何年かぶりに降る雪の夜に訪れたささやかな奇跡だった。
発信を続けることの意味を、もう一度かみしめた夜だった。
そんなわけで、今日も今日とてやきとりです。
いつもありがとうございます。