「もう売り上げじゃないんスよね」

そう言って、同業の友人がしみじみとお湯割りをすすった。

大寒波がやってきた昨夜、僕の店もご多分に漏れず閑散としていた。

そこへヒョッこり遊びに来たのが、飲食業を営む友人だった。

「寒いから熱燗を」

「ふぅ―――、あったまる~~」

「やっぱ、こんなに寒ければビールって気分じゃないっスよねー」

そんな会話から始まり、熱燗を飲み終えた頃には自然と焼酎のお湯割りに切り替わる。

彼があまりにも美味しそうに飲むものだから、つい僕も我慢できずに「よし、オレもいっちゃう」とお湯割りを注ぐ。

すると、ハハハと笑いながら「もう、いきますか?いっちゃいますか?じゃあ、僕もおかわりを」と、自然と二人飲み会に突入した。

話題は日々の仕事のことへ移っていく。

「毎朝、血圧を測るのが日課になった」とか「酒が弱くなった」とか「何歳まで働けるんだろうね」とか。

そんな会話の流れで、彼がボソッと言ったのが冒頭の一言だった。

「もちろん、支払いとかあるから、ある程度の売り上げはないと困るけど、誰でもウェルカムってわけにはいかんスよね~」

その言葉を聞いたとき、心にストンと落ちた。

僕だけじゃないんだな、と。

みんな同じことを考えているんだな、と。

飲食業をやっていれば、どんなお客さんにも来てもらいたい、そう思うのが本音だ。

しかし、実際には手が回らないこともあるし、すべての客に全力で応え続けるのは難しい。

結局のところ、どれだけお客さんと楽しい空間が作れるか、それが一番大事なんじゃないか。

友人が帰った後、またまた同業のご夫婦が来店してくれた。

夫婦で飲食店を切り盛りしている彼らとの会話も、自然と仕事の話になる。

「ウチのバイトの子たち、まかないをスゴく喜んでくれるんですよ」

そう話す奥さんは、なんとバイトの子たちのために、翌日のお昼の弁当まで作ってやることがあるらしい。

物価高のこのご時世、そこまでやるのか、と驚いた。

「まかないを出す店も少なくなっているのに、スゴイですねー」

と僕が言うと、彼女は少し困ったような顔をしながらこう続けた。

「でもね、バイト君たちがいなかったら休まないといけないからツラいのよ」

その一言に、飲食店経営のリアルが詰まっていた。

人手不足はどこも深刻で、信頼できるスタッフを確保するのがいかに難しいか。

そんな中で、彼女はまかないや弁当を提供することで、バイトの子たちに少しでも店に対する愛着を持ってもらおうとしているのだろう。

さらに話は続き、急な団体客に翻弄されたエピソードへ。

「もう、てんやわんやでね。。。。正直、キャパオーバーだったわ」

すると僕の口から自然と出たのは、さっき友人と話した言葉と同じだった。

「ご夫婦でやれるだけの範囲でやればいいんじゃないですか。誰でもウェルカムじゃなくて、ムリな時はムリって断ってもいいんじゃないですか。それに、ご夫婦で切り盛りされているお店って強いと思いますけど」

奥さんはハッとした表情を浮かべた後、「そうだよねー」と笑顔になった。

どの店も、ムリをすればするほど、結局は自分たちの首を絞めることになる。

でも、「できる範囲でやる」と割り切ることができれば、店も、自分たちも、もっと長く続けられるかもしれない。

店を長く続けるために必要なのは、ガムしゃらに売上を追いかけることじゃなく、自分達の働き方を見直し、どこで線引きをするかを決めることじゃないか。

「もう売り上げじゃないんスよね」

その友人の言葉が、お湯割りの湯気とともに心に残った。

今日も今日とてやきとりです。

いつもありがとうございます。