焼き鳥屋のカウンターには、今夜もいろんな人がやってくる。
仕事帰りのサラリーマンに、女子会、地元の顔なじみ、旅の人。
けれど、そんな中でふと目を引く誰かって、いるんだよな。
別に美人でも、有名でもないのに──なんでだろうって思う。
なあオヤジ──タイプでもないのに、気になる人っていない?
チュル:
なあオヤジ、たまにさ。
なんか気になる女の人っていない?
別にタイプってわけでもないのに、目が追ってるっていうか…。
オヤジ:
あー、あるある。
昨日もちょうどそういう人がいてな。
チュル:
ほう、どんな?
オヤジ:
団体のお客さんの中にいた、若い女の子でな。
顔立ちは普通。スタイルもごくふつう。
でも、焼き台の前からチラッと見るたびに、
なぜか、その子のことばっかり目で追ってんのよ。
チュル:
へぇ〜、まさか恋か?
オヤジ:
いやいや(笑)
名前も知らんし、話したわけでもない。
でもな、「生ビールのお客さ〜ん!」って呼んだら、
「は〜い!」って手を挙げて笑ったんよ。
その笑顔に、なんかドキッとしてな…。
チュル:
なんかわかるな。
理由とか、そういうんじゃないんだよな。
オヤジ:
そうそう。
あとから考えて、「クセのある子が好きなんかな」とも思ったけど、
でも俺、昔は真面目な委員長タイプが好きだったんよ。
銀行とか市役所で働いてそうな、しっかり者にも惹かれてたし。
チュル:
あれ?ブレブレじゃん(笑)
オヤジ:
いやほんとよ。
でもな、気づいたんよ──
たぶん俺、**“いまをちゃんと生きてる人”**に惹かれるんじゃないかって。
チュル:
うん、それはある。
夜の店で働いてる子でもさ、
しんどそうでも笑って、
お客さんの前じゃ明るく振る舞って。
そういうの見ると、じわっと来るんよ。
オヤジ:
そう。
人生うまくいってるとか、整ってるとか、
そういうことじゃない。
ボロボロでも、今をちゃんと生きてる。
その姿に、自然と拍手送りたくなるっちゅうかさ。
チュル:
じゃあ「タイプです」ってのは、
「いまを生きてる姿がカッコよかったです」ってことなんかもな。
オヤジ:
そう思う。
昨夜の彼女のこと、今はもう気になってないけど、
あの一瞬だけ、たしかに心が動いた。
たぶん、これからも何の理由もなく、
また誰かに目を奪われるんだろうな。
チュル:
で、オヤジはむっつりスケベなんよな?
オヤジ:
そこは否定せん(笑)
チュル:
よっ、やきとり界の石原裕次郎。
オヤジ:
言いすぎじゃ、バカタレ(笑)
チュル:
ま、とにかく今日も……
オヤジ・チュル:
今日も今日とて、やきとりです。