チュル:
「なぁオヤジ、“ゼーロー!”って、あのニュースのやつ、知ってる?」
オヤジ:
「昨日のワシの夜、それやったわ。完封負け。売上ゼロ。笑えんくらい完璧に。」
チュル:
「でもさ、ゼロの日の焼酎って、なんか沁みるよな」
オヤジ:
「そうなんよ。TikTok観て、ボクシングの結果に唸って、気づいたら胸キュンよ。」
チュル:
「……それ、完全に誰にも言えんやつやん」
オヤジ:
「だから言うてる。これは、焼き鳥屋の“誰にも言えない夜”の話やっど」
ゼロ円営業。でも焼酎が泣けるほどウマい夜
チュル:
「オヤジ、昨日、ゼロだったんやろ?」
オヤジ:
「おう。“ゼーロー!”って、ニュースのタイトルコールが頭の中でずっと鳴ってたわ」
チュル:
「わかる〜、あの声な。完封負けってやつやな」
オヤジ:
「でも不思議よ。ゼロなのに、焼酎が泣けるほどうまかった」
チュル:
「そっからTikTok観て、ボクシングの結果チェックして、気づいたらキュン…ってやつか?」
オヤジ:
「お、知ってんな。まさにそれや。誰にも言えんけど、そういう夜ってあるやん?」
チュル:
「で、夕方の時点でなんとなくそんな予感はあったわけや?」
オヤジ:
「そうそう。予約なし、テイクアウトの電話も鳴らん、観光客の影も見えん。常連もおらん」
チュル:
「うわー、静けさが染みるパターンやな」
オヤジ:
「6時になっても7時になっても誰もけーへんから、『まぁ、しゃーないか』って言いながら焼酎をグビッと」
チュル:
「沁みるやつやな〜。その一杯が逆に沁みるってやつや」
チュル:
「で、2杯目行って、完全に“仕事”モード切れて、スマホ開いて……」
オヤジ:
「そう、そしたらチャンピオンが1ラウンドでKO勝ちしててさ、『あー強いなぁ』って思って……」
チュル:
「で、そのあとTikTok行って、YouTube行って、何やってんだろって、キュンくるんやろ?」
オヤジ:
「もうそのまんまやな(笑)」
チュル:
「でもさ、そういう日って進んだ気がしなくて、ちょっと落ち込むやん」
オヤジ:
「そう。昨日はよく売れたのになぁって思ってさ。1歩進んだと思ったら、2歩も3歩も戻ってる気がして」
チュル:
「イチローのあれやな。“成長は1歩進んで2歩下がる曲線”ってやつ」
オヤジ:
「そう、それ。思い出して、ちょっとだけ自分のこと許せた気がしたんよ」
チュル:
「結局さ、忙しいと『アーー忙しい!』ってなるし、ヒマだと『アーーーヒマやー』ってなるし」
オヤジ:
「そう。でも、ワクワク感だけは、持っておこうと思ってな」
チュル:
「ワクワクしときゃ、元気出るもんな」
オヤジ:
「そう、アントニオ猪木の言葉や。“元気があれば、なんでもできる!”」
チュル:
「結局それ、真理やわ。ゼロの日も、それがあれば物語になる」
オヤジ:
「そうやな。焼酎がうまかった。それで今日はもう十分や」
チュル:
「また明日、火入れればええ」
オヤジ:
「そういうことや。ゼロの日こそ、ちゃんと書き残しときたかったんよ」
チュル:
「こうして話してくれたってことは、オヤジ、前に進んどるで」
オヤジ:
「おう、ありがとうな。……だから今日も今日とて、やきとりです」