「おとう、夏休み、友達とバイトに来ていい?」
高1のむすこが友達とうちの焼き鳥屋でバイトをしたいらしい。
「マジメにやってくれるならいいよ」と返した。
その初日が今日ってことで、なんとなく朝から背筋が伸びっぱなしだ。
高校生だけに、バイトに来るということだけで、どこか未来を想像してしまう。
だから、仕事云々よりも、もっと仕事の本質的なことを学んで経験してほしいと思った。
テーブル番号とかドリンクのつくり方とかを教える前に、まずはどうしても伝えておかないといけないことがある。
これだけは、耳にタコができるくらい伝えなければならない。
それは——–この仕事は、「お客さんをハッピーにするためにやる」ということだ。
焼き鳥屋というのは、ただ肉を切りたくって、串に打って、焼いてだすだけの店じゃない。
一杯のビールで、一日の疲れをふっと抜く人がいて、ひとりの時間を楽しむ人がいて、恋人や家族、仕事仲間との思い出を重ねに来る人もいる。
そんな”かけがえのない一日”の一部になる場所なのだ。
だから、たとえ今日から働く君が、まだ串を一本も焼けなかったとしても、「自分にできることでどうやったらお客さんを笑顔にできるのか?」を考えて行動してほしい。
それだけでいい。
それさえしてくれれば、OK。
それがいちばん大事なことだから。
焼酎の水割り用の氷や水が空になりそうだったら、何も言われる前に持っていく。
お客さんが「トイレどこ?」と聞いたら笑顔で「ここですよ」と教える。
忙しくても、笑顔だけは忘れない。
そんな小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな信頼になる。
でも、これを「時給で働いているんだから、そこまでやらなくてもいいでしょ」と思ってしまったら、その時点でこの仕事の本質から離れてしまう。
実はこの「時給」という仕組みには、現代のある”問題”が潜んでいる。
それは「時間=お金」という発想が、働くことの意味をすり減らしてしまうということ。
学校では「指示されたことをきちんとやる」が評価される。
でも社会に出てから必要なのは「どうすればもっと良くなるか?」を自分で考える力だ。
それがないと、気づけば”指示待ち人間”になってしまう。
そしてこの問題は、ある大きな視点とつながっている。
「人生そのものもマーケティングみたいなもんじゃね?」
焼き鳥屋の現場って、人生そのものだな、と思う。
ウマく焼けたかどうかも大事なことなんだけど、誰に、どう届けるのかも同じくらい大事なこと。
どんなに美味しくても、届け方が悪かったら伝わらない。
自分の価値を届けることができなかったら、結局、何も届かない。
これは焼き鳥の話でもあるし、人生の話でもある。
マーケティングとは「価値をどう届けるか」を考えること。
どんなにいい商品でも、誰にも知られなければ売れない。
どんなに魅力的な人でも、伝え方を間違えれば選ばれない。
これはまさに、人生そのものと同じじゃないか?
バイトの現場で「どうしたらお客さんが喜ぶか」を考えることは、自分という人間の価値を、目の前の誰かに届ける練習でもある。
時給のためにただ自分の時間を切り売りするのか。
それとも「目の前の人を笑顔にする」という目的で動くのか。
この違いは、将来ものすごく大きな差になる。
自分の行動が誰かの喜びに変わる感覚。
「ありがとう」と感謝される手応え。
それを知っているかどうかで”人生というマーケット”に立ったときの姿勢が変わるのだ。
「与えられたことをこなす」人よりも「価値を生みだせる」人。
「仕掛けられる」人よりも「仕掛ける」人。
「焼き鳥を出すだけ」じゃなく、「笑顔もいっしょに届けられる」人。
「時給」で動くんじゃなく、「ありがとう」で動ける人。
「言われたからやる」んじゃなく、「自分で考えてやる」人。
そんな人が、どの仕事でも、どの人生でも、最後に選ばれるのだと思う。
だからこそ君に伝えたい。
このバイトは、ただのお小遣い稼ぎじゃない。
「人生のマーケティング」を学んで行動する、最初の現場なのだ。
自分の価値を、どう届けるか。
その問いを胸に、今日も今日とて、やきとりです。
いつもありがとうございます。