焼き鳥屋をやってると、時々ふと、
「こんな一言に救われるんだな」って夜がある。

それは、ミスもあって、バタバタで、心が擦り減ったような晩。
だけど最後には、「やっててよかったな」って思わせてくれるような——そんな夜。

昨夜の話を聞いてくれ、チュル。

オヤジ:
いやぁ、昨日はな、まいったぞ〜。久々に「やっちまった」って思った。

チュル:
またやったのか(笑)何があったんや?

オヤジ:
7時の予約のファミリーにな、ドリンクとか焼き鳥とかは出したんだけど……
フードの伝票がドリンク伝票の下にピッタリくっついとってな。

チュル:
あーー、それ、完全に“埋もれた系”やな(笑)

オヤジ:
そうそう。「セーフ!」って思ったけど、
内心は「終わった…」って汗ドバーよ。

チュル:
で、どんな空気になったんよ?ピリッとした?

オヤジ:
それがな、「すみません、今からになるんですけど…」って謝ったら、
その奥さんがニッコリ笑って「だいじょうぶですよー」って。

チュル:
……それ、グッとくるな。

オヤジ:
いやホントに沁みた。
ミスった自分よりも、「責めない人間」に心がやられた感じやったな。

チュル:
なんかさ、「正しさ」でぶん殴られる世の中やからな、今。
ちょっと待たせたら「まだですか?」、値段上げたら「高いね」。

オヤジ:
そうそう。サービスはていねいに、料理は早く、店員は清潔で愛想よく、しかも安く。
……そりゃ誰でもテンパるわ。

チュル:
でもその「だいじょうぶですよ」は、たぶん“人を信じる言葉”なんやろな。

オヤジ:
たしかになぁ。でな、食事終わったあとよ。
そのファミリー、皿とかグラスとか、自分たちで片づけ始めたんよ。

チュル:
え!客が?

オヤジ:
奥さんが子どもたちに「ほら、あっちも全部持ってきて」って。
ニコニコしながらテーブル全部キレイにしてくれた。

チュル:
ええ話やん、それ。
で、オヤジは何したんよ?

オヤジ:
カウンターの中から「大丈夫ですよ、どうかそのままで!」ってアタフタ(笑)

チュル:
あはは、オヤジ完全にパニくっとる(笑)

オヤジ:
ホントにな。料理は遅れたし、片づけまでさせてもうたし、
「オレ、なにやってんだか…」って。

チュル:
でも、そんな夜やからこそ、沁みたんやろ?

オヤジ:
ああ。「正しさ」は大事やけど、それで人を責めちゃいかんな、って思った。

チュル:
そういう人に出会えたってのが、オヤジの“当たり”やな。

オヤジ:
ほんとそれ。だから思ったんよ、
「だいじょうぶですよ」と言える人がいること、
そしてその言葉を受け取ったこと。
それだけで、この仕事を続けてきた意味ってあるな、って。

チュル:
……オヤジ、いい夜だったんやな。

オヤジ:
そうだな。

ってことで、
今日も今日とて、やきとりです。