「お客さんって、何にお金を払ってくれるんだろう?」

そりゃあ、まずは焼き鳥だ。

だけど、昨日の光景を思い返すと、「モノ」じゃなく、もっと別なものーー目には見えない「価値」を買っている気がした。

たとえば、ビッグスマイルで帰っていった外国人カップル。

あの二人が買ったのは、焼き鳥そのものより「日本のローカルな焼き鳥屋で食事をする」という体験だろう。

写真を何枚も楽しそうに撮っていたのも、その証拠だ。

近所の常連さんたちはどうか。

求めているものは、味だけじゃなくて、自宅でも職場でもない場所で、仲間とすごす安心できる時間だったはず。

笑い声とグラスの音が混ざるあの空間は、それだけで価値がある。

そして、帰り際に「個室とっててくれてありがとうねー、助かったー、焼酎は名前書いてキープしててね」と言ってくれたファミリー客。

あれは単なるお酒の取り置きじゃない。

「また来ます」という約束であり、まだ訪れてもいない未来の楽しい時間への「投資」だ。

こうやって見てみると、お客さんはその日その時の気分や目的によって、

ある人は「体験」を買い、

ある人は「時間」を買い、

ある人は未来への「期待」を買っていく。

そして、全部の土台になっているのが、日々のやりとりで積み重なった「信頼」だ。

でも、一方でそうじゃないお客さんもいる。

「個室あいてますかー?」と聞かれたら、気を付けなければならない。

誰でも彼でも「大丈夫ですよー」って言ってたら大変なことになる。

うちの個室はひとつだけで、掘りごたつになっているので、小部屋とはいえ、10人くらいはゆっくり座れる人気の部屋だ。

そこへ2人とか3人の予約は正直こまる。

こまるのは、ぼくだけじゃない。

5,6人でのんびりしたい人や、家族同士の集まり、足の悪い仲間がいるグループも同じように困るのだ。

先日も、そんなことがあった。

「個室あいてる?」「あいてますよ」「じゃあ6時で」「何名様ですか?」「...3名」

連休中ってこともあり、「さすがに3名様ではちょっと、、」とお断りすると、「じゃあ奥のテーブルでいいから」と返ってきた。

どんな人なのか気になっていたが、やって来たのは坊主頭のタトゥーの旦那さん、わりときれいな奥さん、ゲームに夢中な息子。

やっぱり、個室に通さなくて正解だった。

時間が経つにつれ、「早く帰ってもらわないと感」が強くなっていく。

「すみませーーん」とわざわざ呼ばれたかと思えばメニューにないものを注文したり、何を運んでも無視したり。

息子は、席についてからずーっと寝っ転がってゲームをしている。

食い散らかしたテーブルには、店や料理へのリスペクトは欠片も感じられなかった。

こういうお客さんは、焼き鳥の味も、時間も、未来への期待も、何ひとつ買っていない。

欲しいのは「自分たちの思い通りになる空間」だけだ。

そこには、人と場所を大事にする感覚がない。

世の中では「モノ消費からコト消費へ」と言われるけど、本当に価値を感じられる人と、ただ場所を消費するだけの人がいる。

人とのつながりが薄くなり、自己中心的な消費が増える今だからこそ、ぼくは「本当に価値をわかってくれる人」に一本一本、焼き鳥を渡していきたいと思う。

その一本一本が、ぼくにとっての価値そのものだ。

今日も今日とて、やきとりです。

いつもありがとうございます。