「コンビニで車が売れた」――そんなラジオのテーマに、思わず「うそやろ」と声が出た。コンビニで車? ジュースやおにぎりの横にEVが並んでるわけじゃあるまいし、どういうことか。
よく聴いてみると、話はこうだった。
東京、神奈川、千葉、静岡のファミリーマート10店舗の駐車場を使って、韓国の自動車メーカー・ヒョンデが新型EVの試乗会を開いたというのだ。
しかも、店内のデジタルサイネージには、同じ車の映像が何度も流れている。つまり、買い物客は「見る」「停める」「触る」を繰り返すうちに、知らぬ間にその車への“親しみ”を育てていく。
それを専門用語で言えば「ザイオンス効果」。
人は、何度も見たり聞いたり触れたりするだけで、その対象に好意や信頼を抱くという心理現象だ。
要するに、見た回数、聞いた回数、触れた回数が心を動かす。
これを聞いた瞬間、「なるほど」と思った。
焼き鳥屋をやっていても、同じことが起きているからだ。
SNSで何度も「薩摩炭火やきとり 居酒屋つかさ」の名前を見かけたり、店主の笑顔の写真を目にしたりするうちに、「なんか行ってみたい」「どんな店なんだろう」と興味をもってもらえる。
それは広告ではなく、顔の回数がつくる信頼なのだと思う。
──けれど、ここからが面白い。
ファミマやローソンの取り組みを、ただ「新しいビジネス」として見るだけではもったいない。
この流れの奥には、社会の深い変化が隠れている。
昔は、近所の人と立ち話をする場所があった。
商店街、銭湯、公園、駅前の広場。
しかし、そうした“偶然の出会いの場”はどんどん減っている。
その穴を埋め始めているのが、実はコンビニだ。
郵便も、銀行も、薬も、チケットも、全部ここで済む。
つまり、コンビニはもはや“小売店”ではなく、“地域の小さなインフラ”。
駐車場で車の試乗会をするのは、「モノを売る場所」ではなく、「人と企業が出会う場所」に変わりつつある証拠だ。これは、公共の民営化とも言える。
社会の中で“人が交わる場所”が減った今、民間企業が“出会いの場”をデザインし始めている。それを“ビジネス”と片付けるのは簡単だが、実際には「誰が地域の縁をつなぐのか」という大きな問いに向き合っているのだと思う。
もう一つ、ザイオンス効果の話には別の意味がある。
現代は、SNSやAIの時代。一度の発信では誰の心にも届かない。
情報があふれて、何が本当かわからない今だからこそ、**信じられるのは“何度も会うこと”と“顔を見て話すこと”なんだと思う。**企業はそれを知っている。
だからファミマはサイネージを、ローソンは車中泊を仕掛ける。「また会ったね」と思わせる距離感を、テクノロジーで作っているのだ。
それはまるで、人が恋をする仕組みに似ている。一度の出会いでは恋に落ちない。何度も顔を合わせるうちに、「この人、なんかいいな」と思い始める。
コンビニとEV車の関係も、実はそれと同じだ。
思い返せば、昔のコンビニには下着なんて売っていなかった。
ところが今では、どこのコンビニにも置いてある。
昔、非常識だったことが、今は当たり前になっている。
常識ってやつは、スマホのOSみたいなもんで、気づけばもうアップデートされてる。
だから、「コンビニで車が売れる」も、笑っていられない。
気づけば数年後には、「ちょっとそこのファミマでEV車買ってくるわ」という時代が来ているかもしれない。
そしてその変化は、働き方にも通じる。“安定”より“変化”。“正解”より“接点”。常識の外側に、新しい日常が生まれる。
焼き鳥屋が音楽を作るなんて、昔なら「何考えてんだ」と言われただろう。
でも今は違う。
AIが曲を作り、スマホで映像を作れる時代。
「それ非常識だよ」と言われてるうちに動きだす人が、次の時代を面白くしていく。
ぼくも焼きながら思う。
お客さんが何度も店の名前を見て、声を聞いて、顔を見て、「なんかいいな」と思ってくれるなら、それでいい。それがぼくの“信頼のつくり方”なんだと思う。
コンビニの駐車場は、いまやただの駐車スペースじゃない。
それは、人と未来が出会う場所だ。
昔の非常識が、いつの間にか常識に変わる。
そのスピードに戸惑いながらも、ぼくは今日も火をおこす。
まだ誰もやってないことを、最初にやる勇気。
それを笑える心。
そして、変化を面白がる余裕。
そんなことを考えつつ、
今日も今日とて、やきとりです。