炭火が静かにパチパチと音を立てている。
カウンターにはチュル、手には焼酎のグラス。
奥の厨房で、オヤジがスマホをいじっているのを見つけて言った。

「オヤジ、また変なもん作ってんのか?」

そこから始まった夜の話は、
焼き鳥とAIと、ちょっとした“夢中”の話だった。

チュル「オヤジ、またAIとかいじってんのか?」

オヤジ「ああ、“SORA2”ってやつでな。動画が作れるんだよ。気づいたら一時間、無心になってた。」

チュル「無心って、修行かよ(笑)」

オヤジ「いやマジで。十代の頃、ファミコンに夢中になってたあの感じ。あれが戻ってきたんだよ。」

チュル「へぇ〜、AIでファミコン気分か。時代だねぇ。」

オヤジ「“カメオ”って機能があってな。自分の顔を登録しとくと、なんでもできるんだ。新宿の歌舞伎町をレポートさせたり、銀行強盗をさせたり、焼き鳥屋にヒグマを登場させたり。」

チュル「ヒグマ!? また突飛なとこ行くな(笑)」

オヤジ「ははは。最初はふざけて作ってただけなんだよ。でもな、いじってるうちに思ったんだ。
テクノロジーは道具を変えただけで、夢中になる心は昔のまんまだなって。」

チュル「なるほどな。ファミコンのボタンが、今じゃAIのキーボードってわけか。」

オヤジ「そうそう。道具は変わっても、人が没頭してるときの顔は同じだよ。
結局、“自分の世界を持てる時間”ってのが、人を生かすんだろうな。」

チュル「確かに。それで、AIで何作ってんだ?」

オヤジ「最初はヒグマが焼き鳥食ってる動画とか(笑)。
でも、作ってるうちに気づいたんだよ。
いまは“誰でもつくり手になれる”時代だろ。
でも逆に、“なんで作るか”が問われる時代でもあるんだよ。」

チュル「なるほど、オヤジらしいな。
昔は“作る人”と“見る人”が分かれてたけど、今はみんな参加者だもんな。」

オヤジ「そう。つくることが、もう特別じゃなくなった。
だけどそのぶん、自分の軸を持ってないと、あっという間に流される。
自由ってのは、思ってるより重いんだよ。」

チュル「名言出たな、それ。
でもさ、そんなこと考えながらAIいじってる人、オヤジくらいだよ(笑)」

オヤジ「ははっ、でもおもしろいんだよ。
SORA2いじってると、ひとりでいる時間の意味が少し変わってくるんだ。」

チュル「どう変わるんだ?」

オヤジ「前は“いいね”がもらえると嬉しかったけど、
あれって一瞬で終わるんだよ。
でもSORA2は違う。“共演していいよ”ってカメオを承認してくれた人と、
自分の分身が一緒に映像の中で動く。
“承認”じゃなくて、“共に楽しむ”時代なんだ。
AIは、孤独な人間を“ひとり遊びの相棒”に変えてくれる。」

チュル「いいこと言うな。それ、ちょっと沁みた。」

オヤジ「孤独が癒されるんじゃなくて、孤独が創造に変わるんだ。
それが、SNSの“いいね”にはなかった喜びだよ。」

チュル「……それ、noteで書けよ(笑)」

オヤジ「書いてるよ、頭の中でな。」

チュル「でもさ、他人の顔とか使えんだろ? それって大丈夫なのか?」

オヤジ「そこが大事なとこだよ。
Cameoって、他人の顔も使えるけど、扱いを誤るとすぐトラブルになる。
だから俺は、“承認してくれた人のカメオだけ”使うって決めてる。
それがこの時代の“信頼のルール”だ。」

チュル「なるほど、オヤジはそういうとこちゃんとしてるもんな。」

オヤジ「ルールってのは自由を縛るもんじゃない。
文化を育てるための土台だよ。
AIがどれだけ進化しても、人が人でいられるかどうかは、
こういう“約束”の積み重ねだと思う。」

チュル「……また深ぇこと言うな。ほんと焼き鳥屋なのかお前。」

オヤジ「焼き鳥屋だよ。
でもな、炭火の前にいると考えるんだ。
火を見つめてると、不思議と心が整う。
AIがどれだけ進化しても、“夢中になる力”が人間を動かすことに変わりはない。
それが動画でも、音楽でも、焼き鳥でもな。」

チュル「……じゃあ、もう一本塩で。」

オヤジ「おうよ。今日も今日とて、やきとりです。」