焼き鳥屋のカウンターには、人生相談より深い話が転がってる。
たとえば、朝の“息子の一言”から始まった、AIと人間のすれ違いの話。
今夜も、煙の向こうでチュルがニヤッと笑う。

チュル「オヤジ、今朝も息子くんから電話あったのか?」

オヤジ「あったあった。だいたいこの時間にかかってくるとな、決まって“送ってくれ”なんだよ。」

チュル「ははっ、相変わらずだな。寝ぼけ声で?」

オヤジ「そうそう。でな、連休明けだったから“今日はくるな”と思ってたら案の定だ。
団地に迎えに行って、学校まで車走らせてたら、急に“あっ、今日は駅まででいい”って言うんだ。」

チュル「ほう?なんでまた。」

オヤジ「それが聞いてもボソボソでよ。“朝練ないし……ゴニョゴニョ”だとよ。」

チュル「うん、うん。わかるようで、わからん。」

オヤジ「だろ?“なんで朝練ないと電車なんだ?”って聞いたら、“あと10分くらい余裕あるから大丈夫”って。
なるほどと思ったけど、最初から言えよって話だよ。」

チュル「若いもんは説明が足りんねぇ。」

オヤジ「でな、その時ふと思ったんだ。――“AIってたいしたことないよな”って言う人、たぶん同じなんだよ。」

チュル「お、また急に深いな。どういうこと?」

オヤジ「要するにさ、“前提をすっ飛ばして要件だけ言う”ってやつ。
息子が“駅まででいい”しか言わんのと一緒。
AIに“〇〇について教えて”って言っても、背景がなきゃ、そりゃ浅い答えしか出せん。」

チュル「なるほどねぇ。最近、“このプロンプト使えば完璧”とか、そういうテンプレート流行ってるもんな。」

オヤジ「そうそう。まるで呪文よ。唱えれば答えが出ると思ってる。
でもな、使い手が考えることをやめたら、AIはただの箱だ。」

チュル「言葉を省略しすぎた社会、ってやつか。」

オヤジ「まさにそれだ。SNS見ても、“了解”“草”“スタンプ”ばっか。
会議じゃ“空気読んで”だろ?言葉の量は多いのに、中身は薄くなってる。」

チュル「“察して”が通じるのは、同じ空気の中にいる人だけだもんな。」

オヤジ「そう。違う立場、世代、文化じゃ伝わらん。
AIだって空気読めんのに、“わかってくれない”って嘆く。
実際は、俺たちが“伝えようとしてない”だけなんだよ。」

チュル「なるほどなぁ。AIのせいじゃなく、人間の怠け癖か。」

オヤジ「そう思う。
AIを使える人と使えない人の差って、技術の差じゃなくて“伝える力”の差だと思うんだ。
自分の頭を整理して、筋道立てて説明できるかどうか。
それができる人はAIにも、人にも通じる。」

チュル「オヤジ、今日の焼き鳥、いつにも増して味わい深いな。」

オヤジ「だろ?タレも哲学も、煮詰めるとコクが出るんだ。」

チュル「うまいこと言うねぇ。」

オヤジ「まあでもな……とはいえ、AIにうまく伝わらんときは、マジで噛み合わん。
“そうじゃない!”って何度言ってもわかってくれんときもある。」

チュル「ははは、それでどうすんの?」

オヤジ「そんなときは、思わずこう言っちまうんだ。」

チュル「まさか……?」

オヤジ「“バーカ”ってな。」

チュル「はははっ!オヤジ、AIにまで毒舌かよ!」

オヤジ「だって、かわいいだろ?そういうときほど。
ま、今日も今日とて、やきとりです。」