「つかさも、いよいよグローバルになってきたか」
そんな話を、今夜もチュルと焼き台の前でしていた。
炭の火を見つめながら笑った夜のことだ。

オヤジ:
いやぁチュル、こないだの夜はすごかったんだよ。
団体客の注文に追われててさ、
焼き台の前がもう戦場みたいになってた。

チュル:
ほうほう、また忙しかったわけね。

オヤジ:
そう。で、そこに日本人のようで日本人じゃないようなカップルが来てさ。
「カウンターいいですか?」って。
反射的に「どうぞ」って言っちゃった。

チュル:
あー、断れないタイプね。

オヤジ:
そうそう。
で、席についたと思ったら、今度は金髪の兄ちゃんと日本人の彼女。
また来たかーって思ったらさ、
さらに中国人の三人組が登場よ。

チュル:
うわ、三連チャン!?
そりゃもう、炭より火ぃつくやろ。

オヤジ:
だろ?
正直、“もう無理だ”って思った。
でも、気づいたらもう座敷に座ってんの。
逃げ道はない。

チュル:
あー、あるある。
人って、座っちゃったら勝ちだもんな(笑)。

オヤジ:
ほんとそれ。
で、「やるしかないか」って火を見つめたんだ。
店の中はもう、いろんな言葉が飛び交ってさ。
英語、たぶん中国語、時々日本語。

チュル:
国際会議か(笑)。

オヤジ:
ほんとに。
でもね、不思議とみんな楽しそうで。
焼き台の煙の向こうで、笑い声が混ざってるのが悪くなかったんだよ。

チュル:
ほう、それで?

オヤジ:
その中国人のカップルがスマホ見せてきてさ。
「ヘイボス、焼き鳥の盛り合わせを店内で食べられるようにしてください」って。
“ヘイボス”って(笑)

チュル:
おまえ、もうボスやん(笑)

オヤジ:
いやほんと、あの響きがクセになる。
で、そのあとも「洗剤くれ」って言われてさ。
白い服にタレこぼしたらしくて。
ティッシュに洗剤つけて渡したら、
「センキュー!」って満面の笑顔。

チュル:
あー、なんかその笑顔浮かぶな。

オヤジ:
だろ? あの笑顔に救われたよ。
しばらくしてまたスマホ出してきて、
「タクシー呼んでくれますか?」だって。
もう、“ヘイボス”フル稼働よ。

チュル:
万能ボス(笑)。

オヤジ:
そうそう。
でも、言葉は違っても気持ちは通じる。
あの夜、ほんとそう思ったな。

チュル:
うん。笑顔って、翻訳いらんもんな。

オヤジ:
そう。
三人組もさ、豚足と焼き鳥が気に入ったみたいで、
大ジョッキでビール飲みながら焼酎で乾杯してた。
焼酎がチェイサーになってたもん。

チュル:
強ぇな、それ(笑)

オヤジ:
「オウ、オイシイ!」「マタクルヨ!」って。
その声が炭の音に混ざって、なんかうれしかったんだ。

チュル:
あー、それはいい夜だ。

オヤジ:
気づいたら、店内が静かになってた。
グラス洗いながらふと思ったよ。
グローバルって、都会の話だと思ってた。
でも、こんなど田舎の小さな焼き鳥屋にまで、それが広がってる。

チュル:
なるほどなぁ……
時代って、ちゃんと煙の隙間から入ってくるんだな。

オヤジ:
ほんとそれ。
円が弱くなったり、日本人が減ったり、
ニュースで聞くと寂しい話ばっかりだけどさ。
あの夜の笑顔見てたら、“悪くないな”って思った。

チュル:
悪くない、な。

オヤジ:
世界はきっと、こうやって少しずつ混ざっていく。
焼き鳥の煙の向こうに、いろんな笑顔があった。
それで、もう十分だった。

チュル:
……いいこと言うなぁ、ボス。

オヤジ:
やかましい(笑)
今日も今日とて、やきとりです。